こんにちは、綾祢です。
2019年の夏の終わり、自転車を担いで九州から北海道へ行きました。
目的は「北海道そらちグルメフォンド」。
北海道の空知地方を走りながら、その土地のものを食べていく大きなサイクリングイベントです。
幼少期に行った以来の北海道、久しぶりの遠征、友人とのイベント参加、旅へのワクワクがとまりません。
一日の終わりまでに私は自転車を壊し、タイヤをダメにして、いちばん走りたかった区間には辿り着けませんでした。
それでも、いま思い出すのは楽しかったことばかりです。
北海道の景色の縮尺に驚いた
語彙が完全に飛んでいますが、正直な反応でした。
九州にも田園地帯はあります。ただ、北海道の平野は「向こう側」がなかなか来ません。道が一本、地平線の手前まで伸びていて、その先にようやく山並みが横たわっている。
九州で「まっすぐな道」と言えば、せいぜい数百メートル、長くても数キロ先でカーブするか山や建物で途切れますが、ここでは視界の中に道が最後まで入っています。
翌日走ることになる道を先に見て、気持ちが上がりました。
宿に自転車を三台置かせてもらう
前泊した宿では、ご厚意で廊下に自転車を置かせてもらえました。

大会の翌日に泊まった別の宿では、冬に使うスキー置き場を開けてくれました。
自転車を持って移動する旅は、どこに置くかが常について回ります。
聞く前に用意してくれる土地に来ると、心配ごとがひとつ減ります。
そらちグルメフォンド本番
サイクリストの朝は早い。そして北海道の朝はもっと早い。
九州と2時間くらい朝日が登る早さが違います。まだ4時頃なのにもう明るくてびっくりです。

九州は真っ暗です。
当日の会場は、朝から独特の空気でした。
斜めから差す朝日の中に、ロードバイクが芝生に寝かされ、緑の幟が立ち、
そしてキャプテン・アメリカがいます。

公式のフォトグラファーのみなさんも気さくな方々がいっぱいでした。

開会式は、野外音楽堂のステージで行われました。
ステージの上に自転車とゲストの人たちが並んでます。

遊園地の中から走り出す
スタート地点は遊園地の敷地内でした。走り出してすぐ、北海道グリーンランドの中を走りました。
あれ、既視感ある気がする。
これってもしかして、ガールズ&パンツァーで登場してませんでした!?

誰もいない遊園地の中を自転車で走るのは、なかなか非日常でした。
まだ誰も乗っていないコースターのレールの下を自転車で駆け抜ける。
そしてこの景色、絶対私は(アニメで)見たことがある!
私はかなり浮かれていました。
「どっち選ぶ?」と書かれた、楽しい分岐
このイベントの特徴がグラベルです。
コースの途中に、舗装路をそのまま走るか、少し外れて砂利道へ入るかを、その場で選べる区間があります。
2019年は全部で8箇所ありました。
分岐には、こういう看板が置かれていました。
さぁ、運命の選択です。

「上級者向け」でも「チャレンジコース」でもなく、ただ「どっち選ぶ」。
選択肢がそこに置いてあるだけ、というのが良かったです。
実際の分岐の先はこうなっていました。
舗装が途切れて、白っぽい砂利が奥へ続いていく。

コース上には緑の幟が点々と立っていて、走っていれば迷いません。

細いタイヤでグラベルを走る
私が乗っていたのはORBEAで、タイヤは23c。グラベル向きの装備ではありません。
でもそれは承知のうえで来ています。
なぜなら、私はこれを我慢して走っているわけではありません。細いタイヤでグラベルを走るのが好きなのです。
太いタイヤなら楽しく走れます。当たり前です。
そのために作られているのだから、走れて当然で、そこに驚きはありません。
細いタイヤで同じ砂利に入ると、路面のわずかな起伏を全部拾って、少しでも判断を誤ればすぐ滑る。
その、うまくいくかどうか分からない連続が楽しい。
走り終えたときに手のひらに残っている感覚が、満足感が私にとってはまるで違います。
なのでグラベルロードの分岐に来るたび、迷いませんでした。
看板を見た瞬間に体が曲がっている、というほうが近い。
これが私なりのグラベルの楽しみ方です。
続くグラベルへ
続くグラベルは川沿いの少しだけハードめな道。

でも、このグラベルを選んでいるのは私だけではありませんでした。

誰も競っていません。わざわざ走りにくいほうへ入ってきて、楽しく走っている。
私が「グラベル最高」と投稿したのは、こういう場面でした。
そして、上の写真でサムズアップしている方が、竹谷賢二さんでした。
たまたま同じ砂利区間にいて、たまたま前後になって、そのまま少しご一緒することになりました。
当時、私にとって竹谷賢二さんといえば、山口県のマウンテンバイクイベント汗汗フェスタのイメージ。
基調なグラベルロードを走る姿にお会いできたのは、走った甲斐があった瞬間です。
同じグラベルの道を選んだ人同士として、一緒に走れる。
そして、このあたりで友人に撮影してもらったのが、サムネイルにも使った今でも大好きな写真。
かけがえのない思い出の写真です。ありがとう。


そして、北国独特の防雪設備。
この日いちばん北海道らしい景色でした。
パンク、そしてサイドカット
北海道の道を楽しみながら走っているそのとき、事態が動きます。
14:07 グラベル最高
14:10 パンクなう
14:15 修理して10kmで今度はバーストくぁwせdrftgyふじこlp:;
3分で最高!からパンクして、さらに5分後にバーストしています。
最後の投稿は日本語が崩壊していますが、当時の心境の記録としてはこれ以上正確なものもありません。
タイヤを外して見ると、サイドに裂けた傷が入っていました。

サイドカットは、石が多い道をを走ると起きやすい壊れ方です。
原因ははっきりしていて、要するに私がそういう走り方をしたからです。
こう書くと反省しているように読めるかもしれませんが、そうでもありません。
細いタイヤで砂利へ入るというのは、こういうことが起きうる範囲で遊ぶということです。
発生したら修理して、また走る。この日の私は、それをやっただけでした。
そして、ここで大会の底力を見ることになります。
タイヤをサポートカーで巡回していた自転車屋さんから買うことができました。
タイヤはタイヤブートのようなものを入れて継続することはできるけど不安が残ります。
下手したらそこでサイクリングの旅は終わります。
でもこのときはコース上を走っている自転車屋さんから新品を買って、その場で交換して、また走り出せてしまった。
こういう体制があると分かっていたわけではないので、正直に言えば助かりました。
攻めた装備で行くほど、直す準備のほうは厚くしておく必要があるというのが私の考えですが、この日はその「準備」の一部を、大会側が最初から用意してくれていました。
そして、この日いちばん印象に残ったことが起こります。
スタッフの方が自転車を止めて、一緒に対応してくれたのです。

誰かが路肩でしゃがんでいたら気づく、気づいたら止まる。
そういう空気が、そらちグルメフォンドにはありました。
なお、余談ですが、この日は自転車のフレーム側も壊れています。
フロントディレイラーが使えなくなりました。(笑)
朝の時点で壊れていて、そのまま最後まで走り切りました。
大ボス、封鎖
タイヤを替えて三笠エイドに着いたら、手書きの貼り紙が。

三笠グラベルは、この年のグラベル区間で最難関と聞いていた場所です。
いわば私にとっては大ボスでした。
私が朝から細いタイヤでグラベルロードを走り続けていたのも、正直に言えばここへ辿り着くための助走のようなものでした。
それが、雨で路面が通行不能になり、残念ながら封鎖となりました。
これは、そこそこ悲しかったです。
一日ずっと選び続けてきた先が閉じていたので、最後のページが破れている本を読み終えたような感じです。
不完全燃焼、という言葉がいちばん近い。
ただ、この貼り紙を見て気づいたこともあります。
選べる形になっているというのは、常に選べるという意味ではない、ということです。
グラベルロードは自然の路面なので、雨が降れば状態が変わります。
「どっち選ぶ」と聞いてもらえるのは、両方が安全に通れることを誰かが先に確かめているからでした。
閉じる判断をしてくれたおかげで、私は無事に帰れています。
そして何より、走れなかった区間がひとつ残っているというのは、次に来る理由がはっきりあるということでもありました。
実際、こうして何年か経っても、私はまだ三笠グラベルのことを覚えています。
そして、エイドのお蕎麦は、とてもとても美味しかったです。

ゴール!帰ってきました!
ゴール会場に戻ると、賑やかな光景。

みんな無事でゴール!おつかれさまです!

はわわ、おつかれさま~!
「砂利達人」ゲットだぜ☆
グラベル区間を走り続けた人だけもらえる称号「砂利達人」。
達人なのかどうかはさておき、念願の砂利達人の称号をゲットできました!やったね!
称号と言っても、順位でも記録でもありません。速く走ったわけでもない。
ただ、分岐でグラベルを走った、という称号です。
大ボスの三笠グラベルには行けないまま、称号のほうは手に入ってしまいました。
順番としては少し変ですが、悪くない終わり方だったと今は思っています。
「全部やり切った」で閉じるより、取りこぼしを一つ抱えたまま名前をもらったほうが、その後も続きがあるからです。
二日後に書いたポストのほうが、たぶん自分の気持ちに近いです。
一眼レフを背負っていたことを自分でも強調しているあたり、相当嬉しかったことが、伝わりやすいのではないでしょうか。
軽くして速く走ることもできたのに、一眼レフのカメラを担いで、細いタイヤのままグラベルロードを駆け抜けた。
効率だけで考えると、全部逆をやっています。
ただ、効率よく走ることが目的なら、そもそも家の近くを走ればいい話です。
わざわざ北海道まで来て、荷物を増やして、走りにくいほうを進む。
やらない後悔よりもやった後悔。無事に帰ってくることまでが私の中のセットです。
そして、壊れた自転車のほうは、その後ちゃんと直りました。
「宿題」と書いているのが自分でも可笑しいのですが、確かにあの日から持ち帰った宿題ではありました。おかげでボンドの種類にとても詳しくなりました。
私のORBEA ORCAはいまでも現役です。

また、そらちへ行きたい
一日を振り返ると、遊園地の下を走り、砂利で機嫌よくなり、今では廃線となってしまった(当時は配線ではなかったです)鉄道を眺めて、いろんな人達と写真を撮り、タイヤを裂き、人に助けられ、大ボスにフラれ、おいしいものをたくさん食べる濃厚な時間でした。
そして、これが全部「同じイベントの中で起きたこと」なのが、そらちグルメフォンドのおもしろさであり良さでした。
同じ日に、さまざまな楽しみ方が並走できる形になっていて、それでもゴールでは全員が完走者として同じ場所にいる。
「景色は最高で、人は心暖かくて、ご飯はおいしい。」2日後に自分で書いたこの三つが、そのまま感想です。
イベントは今も続いていて、公式サイトには今年(2026年)の開催情報が出ています。
あのときの分岐が今も同じ形で置かれているかは分かりません。
ただ、私にはまだ踏んでいない砂利が一区間あります。
次に行くときも、たぶん私は細いタイヤのままで、大ボスのほうへ曲がります。
そのほうが、うまく走れたときに嬉しいからです。
参加してよかった、そらちグルメフォンド2019。
いつかまた、あの砂利を踏みに行きたいと思っています。
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